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プラスチック射出成形品に耐衝撃性を付加する高強度塗装|Line-X

自動車やトラック、建設機械などの輸送用機器は、省エネのトレンドを背景に「金属部品の樹脂化(プラスチック化)」による軽量化ニーズがあります。
しかし、プラスチック特有の「耐衝撃の脆弱さ」と過酷な環境下での「腐食・劣化」は、金属からの置き換えを検討する上でネックとなり、「強度が足りず割れてしまう」「薬品や紫外線でボロボロになる」といった課題に対し、材料のグレード変更だけで対応するには限界があります。
そこで今、注目されているのが、プラスチック射出成形品の表面に施す、塗装による「表面改質(高強度化)」です。
本ページでは、米軍も認める耐衝撃性能を持つ「LINE-X(ラインエックス)」について、特徴を徹底解説します。成形から高機能塗装までをワンストップで手掛ける富士合成株式会社が、プロの視点で「割れない・腐食しない」プラスチック製品の実現方法をご提案します。
プラスチックの弱点「衝撃・劣化」を克服する高強度塗装とは?
プラスチック(樹脂)は、金属と比較して「軽量」「形状の自由度が高い」「錆びない(酸化しない)」といった多くのメリットを持っています。自動車部品、医療機器、アウトドア用品など、あらゆる分野で金属代替が進んでいるのはこのためです。
しかし、プラスチックにも弱点が存在します。
1つ目は「物理的な衝撃への脆さ」です。落下や衝突によってクラック(ひび割れ)や破損が生じやすく、構造部材や外装材として採用する際のハードルとなります。
もう1つは「環境要因による劣化」です。プラスチックは金属のように赤錆は発生しませんが、紫外線による黄変・白化(チョーキング)や、酸・アルカリ・溶剤などの薬品接触によるケミカルクラックなど、樹脂特有の「腐食」が発生します。
これらの課題を解決するために、樹脂そのもののグレードを上げる(エンジニアリングプラスチック等を使用する)という手段もありますが、コストが跳ね上がるケースが少なくありません。そこで有効なのが、「高強度塗装」による表面保護です。
高強度塗装とは、単なる着色や加飾ではなく、塗膜自体が強力な物理的バリアとなって基材を守る技術です。
- 物理的保護: 衝撃を吸収・分散させ、基材の割れを防ぐ。
- 化学的保護: 酸・アルカリ・水分・紫外線を遮断し、加水分解や劣化を防ぐ。
現在、この高強度塗装の分野には、圧倒的な厚膜で物理的衝撃を跳ね返す「LINE-X(ラインエックス)」をご提案しています。
【最強の耐衝撃・防食性】LINE-X(ラインエックス)塗装の特徴
「とにかく割れないようにしたい」「過酷な屋外環境で長期間持たせたい」というニーズに対し、現時点で最強のソリューションと言えるのが、「LINE-X(ラインエックス)」です。
圧倒的な耐衝撃・防爆性能
LINE-Xは、ポリウレアを主成分とする特殊コーティングです。その最大の特徴は、適度な柔軟性と強力な密着力により、衝撃を効率よく吸収・分散させる点にあります。
アメリカ軍の施設防護(防爆対策)や、ペンタゴンの外壁塗装、トラックの荷台の保護ライナーとして採用されていることでも知られています。
プラスチック部品にLINE-Xを施工することで、落下させても、ハンマーで叩いても「割れない」強靭なパーツへと生まれ変わらせることができます。
強力な防食・防水性能
LINE-Xは瞬時に硬化し、継ぎ目のないシームレスな塗膜を形成します。これにより完全な防水性を発揮し、水や湿気の侵入を許しません。また、耐薬品性にも優れており、酸性・アルカリ性の液体や、塩水(海水)に晒される環境でも、塗膜が侵されることなく基材を保護し続けます。
金属部品の防錆目的だけでなく、樹脂部品においても加水分解や薬品劣化を完全にシャットアウトできるため、沿岸部の設備や化学プラント内の樹脂カバーなどにも最適です。
デメリットと注意点
一方で、LINE-Xには採用時に注意すべき特性もあります。
- 膜厚が厚い: 一般的な塗装が数ミクロン~数十ミクロンであるのに対し、LINE-Xは数ミリ単位の厚みが出ます。そのため、精密な寸法精度が求められる部品には不向きです。加えて膜厚がある分、製品重量も上がってしまうため、空を飛ぶ製品などには不向きなものといえます。
- 外観(テクスチャ): 表面に独特の凹凸(ゆず肌)が形成されます。マットでタフな印象を与える意匠としては優れていますが、平滑な鏡面仕上げや透明性を求める用途には適しません。
| 項目 | LINE-X(ポリウレア) |
| 主な役割 | 物理的な破壊防止(耐衝撃・防爆) 重防食(防水・耐薬品) |
| 耐衝撃性 | ◎ 最強(割れない) |
| 表面硬度 | 〇(弾性があり傷つきにくい) |
| 耐候性 | ◎(長寿命) |
| 膜厚 | 厚い(mm単位) ※寸法変化が大きい |
| 外観 | マット、凹凸(テクスチャ)、不透明 |
| おすすめ用途 | 建機、アウトドア用品、防災用品、 バンパー、ドローン、化学プラント部品 |
選び方のポイント:
- 「泥、岩、衝撃、海水」といった荒っぽい環境で、とにかく壊れないタフさが必要ならLine-X。
- 「指紋、手脂、洗剤、紫外線」といった日常~屋外環境で、美しさと精密な機能を維持したいならアルティメットコート。
富士合成なら「成形」から「高強度塗装」までワンストップ対応
「LINE-X」を採用する場合で、重要になるのが「成形品(基材)との相性」です。
例えばLINE-Xを採用する場合、塗装膜厚が非常に厚くなるため、あらかじめ塗装分の厚みをマイナスした寸法で金型を設計・成形する必要があります。これを考慮せずに既存の金型で成形すると、部品同士が嵌合(かんごう)しなくなるトラブルが発生します。
さらにクリーンルーム内でのゴミ・ブツ・不良のない塗装環境が不可欠です。富士合成は、創業より80年以上にわたりプラスチック射出成形と塗装を手掛けてきたメーカーです。
- 金型設計・製作: 塗装厚を考慮した最適な金型設計が可能。
- 多彩な成形設備: 50トンから450トンまで、全社で26台の射出成形機を保有し、24時間体制での量産に対応
- 高品質な塗装環境: スピンドル塗装ラインやクリーンルームを完備し、アルティメットコートのような高難易度塗装も安定して量産
「成形はA社、LINE-XはB社」と発注先を分けることなく、富士合成が1社で「成形+高強度塗装」を完結できるため、品質管理の負担軽減やトータルコストの削減、リードタイムの短縮に貢献できます。
高強度・防食塗装の施工事例
最後に、富士合成の技術が活かされた高強度・高機能塗装の事例をご紹介します。
1. リアバンパーのLINE-X プラスチック成型品塗装事例

こちらの製品は自動車のリアバンパーです。こちらはタフな外観、キズ防止、耐久度向上を目的とした試作品になります。
この製品は自動車部品のため、耐久性が求められるますので、当社が開発したLINE-Xを塗装しております。塗装表面はあえて荒くし、粒が出る塗装にすることにより、タフな外観に仕上げております。
キズ防止、耐久性向上を目的とした機能性向上塗装だけでなく、今回のような外観要求にも合わせてお応えすることも可能です。
当社では、お客様のご要望に合わせて最適な塗料、塗装を提案することが可能です。試作、開発から柔軟に対応いたしますので、ご要望のプラスチック塗装がございましたら、まずは一度、樹脂・プラスチック塗装技術ナビにお気軽にご相談ください!
まとめ:衝撃と腐食から製品を守る最適な塗装をご提案します
プラスチック製品の高付加価値化において、「割れない」「腐食しない」という耐久性は強力な武器になります。
富士合成株式会社であれば、お客様の製品の使用環境や要求スペックに合わせて、これら最適な高強度塗装を、「成形段階から」トータルでコーディネートすることが可能です。
「金属部品を樹脂化したいが強度が心配」
「アウトドア製品なので絶対に割れないようにしたい」
このようなお悩みをお持ちの開発担当者様、購買担当者様は、ぜひ製品開発の初期段階からご相談ください。試作から量産まで、最適なソリューションをご提案いたします。